近江商人の共通の理念である「売り手よし 買い手よし 世間よし」という経営理念は、封建経済体制の中、他国で商いを行う上で重要な規律でした。
 五個荘、中村治兵衛家に残る「他国へ行商するも、総て我がことのみと思わず、其の国一切の人を大切にして、私利を貪ることなかれ…」という遺言状が三方よしの考えの原点といわれていますが、多くの近江商人の家訓に同様の戒めが残っています。
 本家を近江に置いて、商売は京、大坂をはじめ江戸や関東一円、さらには東北や九州で行った近江商人は、入手困難な商品を供給したり、持ち込んだ原材料でその土地の産業振興を図るなど諸国産物回しと呼ばれる商いを展開しました。他国で商売をしていたことが、自己の利益を優先する以上に、相手を思い、地域を思う行動や規範が必要であったのでした。
 「三方よし」という言葉は近年、近江商人研究者である小倉栄一郎氏が命名されたといわれています。





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